掌篇 04
日の出とともに外へ。真っ白に染まった雪原は、宵闇が薄れていく黎明の光を受け輝きを増していく。星の光が太陽の出現で薄れていく様は、舞い落ちる雪が溶けるときと似ている。
息が白い。呼気が外気に触れた瞬間熱を失い、私の鼻を冷たくする。いま私がいる世界は、自分の呼吸と、雪を踏みしめる音だけが響き渡っている。
防寒のためニットの帽子を被って出たものの、早々に取ってしまった。もちろん吹きさらしの耳は冷たくて凍えるけれど、不思議と心地よくもある。雪山の空気が私の意識を、感覚を研ぎ澄ませてくれる。お気に入りのブーツで一歩ずつ進んでいくにつれ、心も身体も昂揚していくのがわかる。
空の色が明るくなっていくにつれ、雲の存在感が増していく。いくつもの道のように浮かぶ雲は、太陽に惹かれて伸びていた。
ふと振り返ると、自分の足跡が点々と残っている。私が作った道。いずれ頭上の雲の先へと交わるかもしれない。
バックパックを一度揺らす。トレッキングポールのグリップを握り直し、私は真っ白な道へと踏み出した。