掌編 02 #文芸リレー

 殺すにしろ殺されるにしろ、もう少しまともなやつと殺りたい。
 などとうそぶいていた時代が自分にもありました、を体現することになるとは思わなかった。今ではいかに肉体を延命させるかで必死だ。精神はとうの昔に息絶えた。
 いつも胸の内で炎を燻らせていたはずだった。もはや火種にすらならない。


初出 2020.04.24